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兜町カタリスト

番外編「櫻井英明の現場に行ってみた:第8回 メディロム」

2022/03/30



「お台場へ」
春の陽光に海面がキラキラと輝く東京湾を眺めると生命の息吹を感じるもの。
少し南風の強いある春の日、
ゆったりとして気分で新橋からゆりかもめに乗ってお台場へ。
日本企業として21年ぶりに米国NASDAQにダイレクト上場した「メディロム(MRM)」の本社を訪ねました。
同社のメインブランド「Re.Ra.Ku」は、2015年8月末にリラクゼーションスタジオの単一ブランドにおいて東京都内第1位の店舗数を達成。
随所にこのブランドは見かけます。
でも2020年12月に上場したのが米国NASDAQというのが興味深いところ。

創業され同社の代表である江口康二氏にお話を伺いました。
最初の質問は「目先の話や細かい業績ではなく、中長期の展望を」。
これが深い話でした。
「私たちが、仕事を通して最も大切にしていきたいことは理念の実現です。
愛を与えられる魅力的な人財産に、私たちがまずは成長し、その経験を伝播する。
出会う全ての人々に健康と幸せを届けます。
ヘルスケア・生命科学分野は、21世紀に生きる我々に残された最後のフロンティアです。
すでに多くの地域で情報や金融、人の移動や物流はボーダレス。
世界中の人々の選択肢が増え、生活の自由度が大きく高まっています。
しかし、ヘルスケア分野においては分断状態が今世紀においても続いています。
第一に国境の壁。
これは世界の医療の認可制度の違いによって医療格差が発生している問題です。
アメリカで受けられる先進医療は、日本を始め多くの国では認可に時間がかかり数年程度のタイムラグが発生しています。
これは製薬・医療技術・移植など幅広い治療アプローチに対して多国間で相互に発生している問題です。
第二に予防の壁。
フィットネスやリラクゼーション、メディケーション、食事療法など、いわゆる健康増進に関わるサービスは医療との連携をしていません。
どのような生活習慣に予防効果があるのか。
また治療後の回復にどのようなアプローチが効果的かを繋げて提供されていません。
実は・・・。
ヘルスケア分野は、まだ未整備の領域であるにも関わらず、多くの人々がその事実を認知していないという状況にあります。
世界のあらゆる人種、世代、性別、宗教、イデオロギーを超えて「健康でありたい」という願いは全人類共通であると言えます。
私たちが切り拓く未来は、自由で平等な新しいヘルスケアの世界なのです。

だから・・・。
私たちは、予防から医療まで一貫して提供する「ヘルスケア総合商社」を標榜しています。
数あるヘルスケアメソッド、商品、サービスの中からベストな組み合わせを、ユーザーのライフスタイルに合わせて提供する企業となることを目指しています。
例えば現在、私たちは健康になるための方法を数多くある選択肢の中から、自ら調べて行動しなければいけない世界で暮らしています。
例えばダイエット一つにしても、糖質制限、断食、運動、睡眠、病院での薬の処方と方法は多様化していますが、何がベストな組み合わせなのか理解しにくく情報が分断しています。

この問題を解決するべく、健康増進のためのリラクゼーションサービスから進化し、ITを用いた遠隔トレーニングによる特定保健指導や、無充電トラッカーの開発と挑戦を続けて参りました。
更に今後は保険事業への参入や、病院経営、生活関連サービスへと事業領域を広げ、世界の人々にベストな健康サービスを提供する企業となることを目指します」。
これは同社のホームページにも書いてあること。



「令和のジョン万次郎」
興味深かったのはその先の未来に関してのお話。

今は予防と治療が分断されています。
サービスが連動していないという非常に貧しい状態に見えます。
言い換えれば「治療は処方されるけど、予防は処方のない世界」
ここがどこか違うような気がします。
幕末には東洋医学が西洋医学を排除していましたがその後は西洋が東洋を駆逐した状態。
でも人間の健康や未来について西洋や東洋という分断は必要ないでしょう。
本来は統合されていい分野と考えています。
アメリカのアリゾナなんかでは、東洋医学の研究が大きく行われています。
今後はこういう世界が当たり前になってくると考えています。
というよりも・・・。
広く健康問題や医療や予防を扱っている米国は特別な場所ですし、ある意味憧れの場所。
日本だけでなくグローバルな展開を考えれば資本面だけでなく実務面でも見習うべき点は多いところです。
未来像を想定すれば宇宙だってターゲット。
創薬などの点でとても魅力を感じる存在です。
これからやってくるメタバースの世界だって私たちのフィールドかも知れません。
もう一つの点での未来は「健康保険」の分野。
一律的なものではなく多様性を持ち活用性の高い保険などもいずれは私のターゲットになってくるでしょう。
私たちが培ってきたビジネスの一つの成果はデータベースです。
ユーザーデータベースは約150万件。
このデータベースはヘルスケアデータベースになります。
データベースと保険と情報提供をプラスすれば今まで開発されていなかった保険などの登場も可能でしょう。
少額の健康保険だって可能性があります。
日本という国は歴史的に外からのプレッシャーで変化してきた国。
だから外から日本へ良い変化をもたらす意味では米NASDAQに上場したのは意義深いかも知れません。
病院経営だって当然ながら私たちの未来のフィールド。
例えばカンボジアなど東南アジアで実績を積んで日本に上陸という可能性も高いと思います。
場合によっては製薬メーカーだって究極的には私たちのフィールドです。
私が目指しているのは「令和のジョン万次郎」とよく言っています。
兆円単位の市場規模が目の前に眠っているような気がしてなりません。



「活動量計『MOTHER Bracelet』」
同社の進歩をもっとも表現しているのはトラッカーの「MOTHER Bracelet」。
24時間365日、充電不要で連続的なデータ取得が可能。
そしてSDK配布によるデータ連携で心拍・体表温・睡眠・歩数・消費カロリーといった各種バイタルデータの集中管理が容易なスグレモノ。
体温発電とソーラー発電で永久に充電不要。
歩数・活動量を自動でトラッキング。
睡眠トラッキングで睡眠レベルを可視化。
PPG心拍センサー、体表温センサー搭載。
完全防水対応で入浴・水泳時も常時着用可能。
コレを付けていれば常に見守りも可能ということ。
介護や医療の分野での今後の活躍が期待されるシロモノです。



「リラクゼーションスタジオ『Re.Ra.Ku』」
「健康を、もっと、あたらしく」がコンセプト。
メディロムグループのスタジオでは、疲れを感じた後に施術を行う一時的な癒しではなく、疲れを感じる前に施術を行い、疲れのない身体を目指す「健康管理」が目的。
健康管理サービスでは日常生活における健康を意識するための提案も含んでいるそうです。
セラピストはケア・ライフ・プランナーと呼ばれています。
同社の手技は、筋肉をリラックスさせ、関節の可動域を広げるためのストレッチをいち早く取り入れています。
技術のみならず、専門知識とホスピタリティを学んだケア・ライフ・プランナーが顧客ひとりひとりに合わせたケア方法を伝えることで来店時以外の日常生活でも自身の健康を意識するためのサポートをしています。
肩甲骨ストレッチに主眼を置いて「Re.Ra.Ku」だけでなくベルエポックや温浴施設に展開するSpa Re.Ra.Kuやランニングステーションを展開するRe.Ra.Ku PROなどブランド全体では全国312店舗(2021年12月現在)のリラクゼーションスタジオを展開しています。
お台場の本社では新入社員たちが研修中でした(前々段落写真右)。
お台場ダイバシティ東京プラザの「Re.Ra.Ku」にも伺いました。
平日の昼下がりでしたが何名かの顧客がおられリラックスされていました。
タイ古式ストレッチ「たっぷり180分」は約80種の手技で、仰向け→うつ伏せ→横向き→座位と多彩なストレッチで施術。
筋肉の柔軟性を高め心身のバランスを整える本場の技で極上の時間でした。
全身の疲労感が抜けていくスグレモノでした。



「ポンコツ広報のRoad to NASDAQ」
最後に店長さんが話されたこと。
「ヘルスケア分野は人々をより健康に導くことが目的です。
健康とは、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態とWHOが定義しています。
その中で私たちがプレゼンスを高めるためには、愛を与えられる魅力的な人財の育成が大切です」。
江口代表はこう語ります。
このプレゼンに心酔して入社したポンコツ広報さん。
多少の誤解と錯覚を持ったかも知れませんが「心のコンパスに従って」同社での新卒社会人生活をスタートさせたそうです。
「決めたのは直感です」という言葉が登場していました。
セラピストとしての現場経験は約1年。
英語が1ミリもしゃべれないのに広報担当になってNASDAQ上場の実務を担当されました。
実務面でのNASDAQ上場のご苦労は、出版された「Road to NASDAQ」に描かれていますからご興味あればお読み下さい。
結論としては奇跡のようなNASDAQ上場を自分たちでやり遂げたのですからすごいことです。
友達が結婚しママになっていくのを横目で見ながら「会社を辞めようと思った」というくだりがありました。
でも必死に上場に向けての実務作業を担当してきたポンコツさん。
別れ際に聞いたのは「今後の夢は?」。
「夢の1つであった結婚は果たすことができたので、あとは良いママになることと、小さい頃からの夢でもあるジェラート屋さんを開くことです。そのためにまだまだ学びも必要だと思いますし、メディロム社を成長させることが必要だと考えています。

ボディケアを受けた訳ではないのですが、不思議と心が癒されました。
同社の行動指針。

私たちがヘルスケア総合商社になるためにもっとも大切にしていること。
それは愛を与えられる魅力的な人材を育成することです。
そのために、まずは自分自身が成長すること。
常に同じ方向を向いて高品質なサービスを提供すること。

これが社内外で徹底されているなと感じました。

印象に残った一文。
「上場ずれば偉大な経営者。
出来なければ天下の大ウソつき、詐欺師」。
NASDAQ上場を成し遂げたことからまずは「偉大な経営者の一歩」を踏み出した同社。
脳裏に浮かんだのは1995年頃のこと。
当時の店頭市場に上場した「ソフトバンク」のことでした。
銀行でもないのに社名は「バンク」。
扱っているのは「パソコンの入門書やパッケージソフト」など。
それでも経営者は「世界に出ていく。世界は変わる。世界を変える」。
一トレーダーだった筆者は疑念をいだきながら見ていました。
30年たってみたら、同社の本質が投資ファンドだったことが見えてきて、実際に10兆円単位のマネーを動かし日経平均に多大な価格寄与の会社に成長しました。
世界最大のコンピューター見本市「コムデックス」を運営するThe Interface Group展示会部門への出資。
インターネットのプロバイダ―契約を街中で宣伝していたこと。
もろもろのことは過去となり世界での存在感が増してきました。
今ソフトバンクグループのHPの沿革に登場するのは「創業来変わらない『志』」の文字。

メディロムさんでは「理念」と表現されていますが、このぶれない理念こそ同社にとっての宝。
「ヘルスケア革命」への道程表です。
ポンコツ広報さんたちが半年かけて作成した宝物でしょう。



「ゆりかもめ」
新橋へ向かうゆりかもめの車窓から見えたのは東京タワー。
昔は333メートルという高さで東京のどこからでも見えましたが今では周りを多くの高層ビルに囲まれ存在感を薄くしていました。
逆に634メートルのスカイツリーがひときわ高くそびえている東京の風景。
昭和がかすみ令和の時代。
いつまでも中途半端な場所で満足しているのではなく重要なのは高みを極める姿勢。
グローバル、ユニバーサルというのがこれからの同社の目標だと感じました。



(以上)

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