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No.2995「湯屋番」

大店の若旦那は遊びが過ぎて勘当中。
大工職人の熊五郎の家の2階に居候の身の上。
熊さんは若旦那に湯屋へ奉公を勧める。
紹介状を持って奴湯へ来た若旦那・
早速女湯の入口から入ろうとする。
湯屋の鉄五郎に「外回りで、リヤカーを引いて
おが屑、かんな屑を集める仕事」と言われた若旦那。
もちろんノーで番台に座ると言い出す。
ちょうど昼飯時。
鉄さんの代わりに番台に座ることになった若旦那。
鉄さんが下りてないのに番台に上がろうとする喜びようだ。
さて、番台に上がって早速、女湯を眺めるもこれがガラガラ。
それに引きかえ男湯は混んでいる。汚いお尻、毛むくじゃらの足のオンパレード。
色気も何もあったもんじゃない。
あてがはずれた若旦那、こうなりゃ自分の妄想の世界にどっぷりと入るしかない。
夕方、どこかの大会社の社長の2号さんが女中と一緒に湯屋に来て若旦那を見初める。
ある日、若旦那が2号さんの家の前を通る。
「今日は釜が壊れて早じまい」じゃ色っぽくない。
「母の墓参り」にしよう。
すると2号さんが泳ぐように出てきて家の中に引っ張り込まれる。
若旦那は自分の手を引っ張って痛い、痛いと大騒ぎ。
湯の客も番台の一人芝居に気づき面白がって見物だ。
座敷にあがった若旦那。
2号さんと酒を差しつ差されつ。
その内、雷がゴロゴロ。
2号さんは怖がって蚊帳の中へ。
すると雷が近所に。
2号さんは癪を起して気を失う。
若旦那、盃洗の水を口から口への口移し。
2号さん「まあ、今の水のうまかったこと。
雷さまは怖くとも、あたしにとっては結びの神」
若旦那 「さては今のはそら癪か」
2号さん「うれしゅうござんす番頭さん」。
見ている客は夢中になって、軽石で顔をこすって血だらけ。
すると若旦那は頭をポカポカとぶたれる。
客 「てめえが間抜けなこと言っているから俺の下駄がどこかへ行っちまった」
若旦那 「そこの柾の下駄をはいてらっしゃい」
客 「で、どうすんだい」
若旦那 「順々にはかせて、一番しまいは裸足で帰します」=Pay it Forward?
夏の暑さの真っただ中の夕方。
小腹の空いた男、何かほしいと思っていたところ。
「たまご~、たまご~、夢たまご~。
たまごは要らんかなぁ~?」。
「これは良い。玉子屋、ゆで卵を一つくれんかぃ、
なんぼかいな」。
「1銭です」。
「一つくれんかいな、ゆで卵」。
「お間違いの無いように。これは『夢玉子』でございます」。
「夢玉子ってなんや」。
「この玉子を食べると、夢が見られるのです。
見られる夢は、色々あってどれがどれだか分かりません。
自分の売っているのはこういうお楽しみのお分かりになるお方向け。
どういう夢を見るかわからないほうのものです」。
「それ貰おう」
「夢玉子と言っても、ゆで卵ですからその様にお召し上がり下さい」。
「1銭置いたよ」。
「ゆで卵の夢玉子か。良くむけるな。
黄身が喉につかえそうになったら、白身を間に挟むんだ」。
「『たまご~、たまご~、夢たまご~。たまごは要らんかなぁ~? 夢玉子、一つ1銭~』。
違うがな。
わしは売る方で無く、買った方だッ。
ん?そうか、これは夢かッ。
夢玉子屋になった夢を見ているんだ。
玉子屋は街がこんな風景に見えるんだ。
人間はみんなそれぞれおのれの目ぇから世間見てるから人によって見る景色が違うと言うけど、
たまご屋の目ぇから見た世間て、こんなふぅに見えたのか。
街が外れたら、レンゲ、タンポポの花盛りだッ。
暑いのに、レンゲ、タンポポか?
これが夢だからなんだ。
ははは。お日~さん、山の向こうにお帰りになるんだ。
そろそろ家に帰ろうかな」。
「お帰りなさい」。
「そうか。これが玉子屋の家なんだ。
だから迷わず帰って来たんだ。さっきの声は嫁さんだな」。
「はいはい。『タライに湯が入っているから、汗流して下さい』。
よくできた嫁さんだな。はいはい。
『汗流したら、お膳が出来て、1本付けてある』か。
はいはい、わっかりました。
『あんたの好きなハツのお作りが出来ている』か、本当だ。
旨いな~。これも幸せの極みかも知れんな~」。
「お父さん」。
「この子は何処の子や」。
「隣町のお婆ちゃんのところでお祭りがあるん。泊まってくる」。
「気をつけて行ってらっしゃい」。
「玉子屋の息子だな。幸せのまた上の幸せだな。
はいはい、『先寝かせていただきます』。
お~、蚊帳が吊ってある。
豚の蚊遣りも有るよ。
着物脱いで、何か着て布団に入ったよ。
玉子屋にしてみたら自分の嫁さんだが、
わしにしてみたらヒトの嫁さんだよ。
こんな事あっても・・・。
夢の中だからな~、ま、良いだろう。
そならそうさせていただきます」。
「痛い。何するんじゃぃ。お、お前は玉子屋」。
「お前は誰と何してんじゃぃ」。
「(パンパンパン)痛い。あ、夢醒めたんかぃ。
あッ、玉子屋あんなとこ歩いている。
歩いている間に夜中までの夢を見たんだ。
あの玉子屋、夢の中だと言ってもあんな事が有ったなんて知らんだろう。
後ろ姿を見ていると、お可笑しいような、哀れなような・・・」。
「たまご~、たまご~、夢たまご~。たまごは要らんかなぁ~?
なんぼ、夢の中でも、して良いことと、悪いことがあるぞ~」。