つみたてNISAは、2018年1月から開始され投資初心者をサポートするために、導入された非課税制度です。
NISAは、イギリスの「ISA(Individual Savings Account)」を参考に導入されNIPPONの頭文字「N」を取り、NISAと名づけられました。
また、NISA制度は2024年1月から新しいNISA制度が導入されています。
これまでのNISA制度と新NISA制度では、どのような変更があったのか気になっている方も多いでしょう。
この記事では、つみたてNISAとはどういう制度なのか、新NISA制度はどのように変更されたのかを解説していきます。
つみたてNISAとは投資初心者をサポートするために導入された少額投資非課税制度
つみたてNISAは、少額から長期運用・積立運用・分散投資が可能な非課税制度です。
投資で得た利益には、通常20.315%の税金が発生します。
たとえば投資で30万円の利益を得た場合は、約6万円の税金を納めなければいけません。
しかし、NISA制度では「非課税期間」と「非課税投資枠」が設定されています。
「非課税期間」と「非課税投資枠」内での運用で得た利益は、税金対象にはなりません。
つみたてNISAでは、非課税投資枠が年間40万円に設定されています。
毎月約3万3千円以内に収まる範囲で積み立てた場合は、40万円以内で運用が可能です。
つみたて額は、3万3千円以下でも可能なため、少額でも利用可能な投資といえるでしょう。
NISAの種類は一般NISAとつみたてNISAの2種類に分かれる
NISAの種類は、一般NISAとつみたてNISAの2種類に分かれます。
一般NISAとつみたてNISAでは「非課税期間」と「非課税投資枠」が異なります。
また、投資方法も異なってくるため、事前に確認しておきましょう。
一般NISAとつみたてNISAの違いは、以下の通りです。
現行NISA (2023年12月まで) | 一般NISA | つみたてNISA |
---|---|---|
非課税期間 | 5年間 | 20年間 |
非課税投資枠 | 120万円(年間) | 40万円(年間) |
投資方法 | 一括・積立 | 積立のみ |
投資対象商品 | 国内株式・外国株式・投資信託 | 金融庁に届出されている投資信託 |
引き出し制限 | なし | |
対象年齢 | 18歳以上の成人 ※日本国内居住者 |
つみたてNISAの対象商品は金融庁に届出されている投資信託
つみたてNISAの投資対象商品は、金融庁に届出されている投資信託が対象です。
あらかじめ国が認めた商品を採用しているため、投資経験がない方でも利用しやすい投資といえるでしょう。
金融庁に届出されている投資信託は、具体的に以下の条件を満たした投資信託です。
条件 | 内容 |
---|---|
販売手数料が0円 | 原則として販売手数料が0円の投資信託。 |
運用管理費が一定水準以下 | たとえば、国内株式インデックス型は0.5%以下。 海外株式インデックス型は0.75%以下の投資信託が対象。 |
分配金が頻繁に支払われない商品 | 分配金を投資の運用に回すため。 |
分配金が頻繁に支払われない商品とは、分配金を多く還元した場合、純資産総額が減少して複利効果を得ることが出来ません。
つみたてNISAは、複利効果を最大限に活かすためにも、分配金が頻繁に支払われない商品が採用されています。
またつみたてNISAでは、長期的な運用を目的とされています。
長期的な運用を目的としているため、短期的に得られる利益は見込めません。
つみたてNISAを利用する際は、成長の期待ができる投資信託を選びましょう。
NISA口座は1人1口座に限り開設可能
NISA口座は、1人1口座のみ開設可能です。
口座開設時は、一般NISA口座または、つみたてNISA口座のどちらか1つを選択する必要があります。
また、NISA口座は1つの金融機関で開設した場合、他金融機関でNISA口座を開設することはできません。
NISA口座を変更する場合は、変更したい年の9月末までに、金融機関で変更手続きが必要です。
加えてNISA口座は、金融機関によって取り扱われている投資商品が、異なる場合があります。
NISA口座開設をする際は、事前に取り扱われている投資商品を確認し、口座開設を検討しましょう。
現行NISAと2024年1月から開始された新NISAは分離されている
新NISA制度は、令和5年度税制改正の大綱により拡充・恒久化される方針が発表されました。
方針発表により、2024年1月から新NISA制度が開始されました。
新NISA制度が開始されたことにより「前回のつみたてNISAで買付していた分はどうなる?」と疑問を抱いた方もいるかもしれません。
現行NISAで2023年末までに買付していた分は、新NISA制度とは分離されているため引き続き現在のNISA口座で保有可能です。
ただ、現行NISAの新規買付は2023年末までとなります。
2024年以降は、現行NISA口座で新規買付はできません。
既にNISA口座を開設している方は、自動で新NISA口座へ切り替わります。
2024年から開始された新NISA制度は、以下の通りです。
新NISA (2024年1月~) | 成長投資枠 | つみたて投資枠 |
---|---|---|
制度の併用 | 可能 | |
非課税投資枠 | 360万円(年間) | |
240万円(年間) | 120万円(年間) | |
非課税期間 | 無期限 | |
生涯非課税限度額 | 1,800万円 ※成長投資枠1,200万円 | |
投資方法 | 一括・積立 | 積立のみ |
投資対象商品 | 国内株式・外国株式・投資信託 | 金融庁に届出されている投資信託 |
対象年齢 | 18歳以上の成人 ※日本国内居住者 |
新NISA制度では、一般NISAは「成長投資枠」に名称が変更され、つみたてNISAは「つみたて投資枠」に名称が変更されています。
新NISA制度では成長投資枠とつみたて投資枠の併用が可能
新NISA制度では、成長投資枠とつみたて投資枠の併用が可能です。
現行NISA制度では、つみたてNISAを利用した場合は、同じ年に同時で一般NISAの利用はできませんでした。
しかし新NISA制度では、成長投資枠とつみたて投資枠が一本化され、併用して利用可能となります。
どのようなものかというと、つみたて投資枠の対象商品は、金融庁に届出された投資信託のみ対象です。
しかし一本化されたことによって、成長投資枠の対象商品となる国内株式・外国株式などの商品も購入可能となります。
現行NISA:一般NISAとつみたてNISAどちらか一方を選択。
新NISA:成長投資枠とつみたて投資枠どちらも利用可能。
新NISA制度では併用が可能になったため、更に分散投資をおこないやすくなったといえるでしょう。
新NISA制度では年間の非課税投資枠が大幅に拡大
新NISA制度では、非課税投資枠が大幅に拡大されました。
成長投資枠は240万円へ、つみたて投資枠は120万円へ拡大されました。
つみたて投資枠の非課税投資枠は、現行NISAから約3倍の120万円へ拡大されました。
非課税投資枠は、3倍へ拡大されたため、毎月の積み立て可能額も3倍へ増加します。
たとえば、現行NISA制度のつみたてNISAでは、毎月約33,333円を積み立てすると、年間で40万円の投資枠に収まる計算でした。
新NISA制度のつみたて投資枠は、3倍の120万円へ拡大されています。
毎月の積み立て額は、3倍の約99,999円を積み立てすると年間で120万円の投資枠に収まる計算となります。
新NISA制度では新たに生涯非課税限度額が導入
新NISA制度では、新たに生涯非課税限度額が導入されました。
生涯非課税限度額は、一生の間に1,800万円までは税金の対象外となる制度です。
生涯非課税限度額は、成長投資枠とつみたて投資枠の併用となっており、成長投資枠では1,200万円まで非課税の対象となります。
新NISA制度の非課税投資枠は、成長投資枠とつみたて投資枠との併用で最大360万円までです。
毎年最大360万円の枠を使用した場合は、5年後に1,800万円の枠を使用する計算となります。
生涯非課税限度額の1,800万円を超えて投資する場合は、課税口座が必要となります。
課税口座では、運用で得た利益に対して税金の支払いが必要です。
ただ、新NISA制度では保有中の商品を売却すると、売却した分の非課税枠が翌年に復活します。
生涯非課税限度額の1,800万円を超えてしまう場合は、一度保有中の商品を売却して枠の再利用を検討しましょう。
新NISA制度では非課保有期間が無期限に変更
現行NISAの非課税保有期間は、一般NISAは5年間、つみたてNISAは20年間でした。
たとえば、2023年に買付した投資商品は、一般NISAでは2027年まで、つみたてNISAは2042年まで運用の継続が可能です。
既に現行NISA口座で保有している商品は、新NISA口座への移行はできません。
しかし、新NISA制度の非課税保有期間は、成長投資枠とつみたて投資枠ともに無期限へ変更されました。
非課税保有期間が無期限に変更されたため、保有期間を気にかけることなく長期的な運用が可能となります。
つみたてNISAを活用する際のポイント3つ
つみたてNISAは、投資初心者をサポートするために導入された制度です。
しかし、つみたてNISAを活用するために、最初に抑えておくポイントがあります。
つみたてNISAを活用する際のポイントは以下の3つです。
- つみたてNISAは原則販売手数料無料で長期運用できる
- つみたてで買付することで市場変動リスクを分散できる
- つみたてNISAは売却すれば途中でも引き出し可能
つみたてNISAは原則販売手数料無料で長期運用できる
つみたてNISAで運用可能な投資信託は、政令で販売手数料が無料の投資信託と定められています。
金融商品を取引する場合は、販売手数料の発生する商品が通常です。
しかし、つみたてNISAではノーロード(販売手数料)の金融商品を利用できるため、長期運用に向いてるといえます。
つみたてで買付することで市場変動リスクを分散できる
つみたてNISAでは、一定期間ごとに一定額を投資することで、市場価格の変動リスクを分散できます。
一定額を投資する投資方法は、ドルコスト平均法と呼び、つみたてNISAでもドルコスト平均法が採用されています。
ドルコスト平均法とは?
ドルコスト平均法は、市場の価格が高い時、低い時に限らず一定額を投資し続けます。
一定額を投資し続けることによって、市場価格変動リスクを分散させる戦略です。
ドルコスト平均法は、長期的な運用をおこなう際に有効な戦略とされています。
つみたてNISAは、金融商品の価値が高い時も低い時も、一定額を投資し続ける投資方法です。
つみたてNISAの投資方法は、長期的に見たときの平均購入コストを下げることができ、金融商品の価格変動リスクを分散できます。
つみたてNISAの利用を検討されている方は、事前につみたてNISAの投資方法を把握しておきましょう。
つみたてNISAは売却すれば途中でも引き出し可能
つみたてNISAは、保有中の商品を売却すれば、途中でも引き出し可能です。
加えて、引き出しの回数制限もなく自由に引き出しをおこなます。
たとえば「少し先の予定でお金が必要になるかもしれない」といった場合も対応可能です。
つみたてNISAで途中売却する手順は、以下の流れです。
- つみたてNISA口座で保有中の商品を確認
- 売却したい商品を選択
- 売却金額と口数を入力
- 売却
売却手順や銀行口座への出金方法は、金融機関によって異なる場合があります。
つみたてNISA口座から途中売却する場合は、金融機関の手順に沿って途中売却をおこないましょう。
つみたてNISAを利用する際の注意点3つ
つみたてNISAを利用する際は、いくつか注意点があります。
つみたてNISAの利用を検討されている方は、事前に注意点を確認しておきましょう。
つみたてNISAを利用する際の注意点は、以下の通りです。
- 投資信託の金融商品は元本が保証されていない
- NISA口座以外で保有中の金融商品をNISA口座へ移すことはできない
- NISA口座で損失が出た場合に他の口座で得た利益との損益通算はできない
投資信託の金融商品は元本割れの可能性がある
つみたてNISAは、投信信託の金融商品を対象とした制度のため、元本割れの可能性があります。
元本割れとは、投資した資金よりも少ない投資金しか戻ってこない状態のことです。
たとえば、10,000円の金融商品を購入して、後で金融商品を8,000円で売却したとします。
この場合、投資した資金よりも2,000円足りない状態となるため、元本割れが起きたといえます。
元本割れは、投資金以上に減ることを指します。
そのため、借金を抱える仕組みではありません。
投資金がゼロになった場合は、商品の保有はできなくなり、投資金を追加することで再度運用が可能です。
元本割れは、つみたてNISAに限らず他の投資でも起こる可能性があります。
つみたてNISAを含む投資を利用する際は、元本割れのリスクを理解した上で運用しましょう。
NISA口座以外で保有中の金融商品をNISA口座へ移すことはできない
NISA口座では、金融庁が認めた金融商品の購入が可能です。
NISA口座以外で金融商品を保有している場合、NISA口座への移動はできません。
また現在利用中のNISA口座で保有中の金融商品も、他金融機関のNISA口座へ移すことはできません。
たとえば、現在利用中のNISA口座で金融商品を保有しているとします。
他金融機関のNISA口座を開設する場合は、現在のNISA口座の金融商品を売却して、再度他金融機関のNISA口座で保有しなければいけません。
金融商品は、NISA口座間での移動もできないため注意しましょう。
NISA口座で損失が出た場合に他の口座で得た利益との損益通算はできない
NISA口座で損失が出た場合は、他の口座で得た利益との損益通算はできません。
そのため、NISA以外の口座で投資信託などの金融商品によって得た利益に対しては、税金を支払いする必要があります。
損益通算とは?
損益通算は、一定期間内に発生した損失を同時期に得た利益から、差し引く制度です。
たとえば、1年間運用した株式投資で1万円の利益があり、別の投資で5,000円の損失が発生したとします。
損益通算では、5,000円の損失を利益1万円から差し引くことが可能です。
その結果、課税対象は5,000円となり、支払う税金額も少なくなります。
NISA制度は、非課税で利用可能な制度です。
元々非課税となる枠が定められているため、他の口座で得た利益との損益通算はできません。
NISA口座以外で投資をおこなっている場合に損益を計算する際は、NISA口座の損益は含まないようにしましょう。
まとめ
今回は、つみたてNISAについて解説しました。
つみたてNISAとは、投資初心者をサポートするために導入された少額投資非課税制度です。
NISA口座では、あらかじめ課税対象にならない枠が定められています。
非課税投資枠内で得た利益に対しては、課税対象になりません。
また、NISA制度は2024年1月から令和5年度税制改正の大綱により拡充・恒久化される方針が発表されました。
2024年1月からの新NISA制度では、非課税投資枠や非課税期間が大幅に変更されています。
つみたてNISAの利用を検討中の方は、新NISA制度についても事前に確認しておきましょう。